現在カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum111号の特集ではカンボジアの調味料プラホックについて紹介しましたがそのWeb版も公開します。
5回目の今回はクメール料理研究家のナックさんへのインタビューを紹介します。
<前回の記事はこちら>
クメール料理研究家ナックさん
Chef Nak
クメール料理研究家。2019年に著書『NHUM』を出版。SNSでは料理番組の配信を行い、完全プライベート型の料理教室兼出張レストランや市場ツアーなども開催。
食材以上の価値を秘めたプラホック
Q:カンボジアでは前例が少ない料理研究家として、クメール料理に携わるきっかけは何だったのでしょうか。
もともと料理を作るのは大好きだったんですが、仕事としては別のことをしていました。カンボジアの伝統文化に関係することで、その時に感じたことがきっかけですね。
その時も今も根は同じで、「カンボジアの」文化や芸術を残して、広げて、人々が胸を張って自国のことを語れる未来を作っていきたいという思いです。
どの国でも残念ながら、時代の変化や外国文化が加わることで古いものは端に追いやられてしまいます。
ですが、カンボジアはそれに加えて戦争の影響が大きく、一度失ってしまうと頑張っても取り戻せないものが多い。
そんな中で、伝統文化として語られるものではなく、「生活の中で活き続ける文化」はないものかと考えていて、「食」に可能性を感じたんです。
もし20~30年後、私の子供たちが大きくなった時に、クメール料理が日常生活とは離れた場所で特別な料理になっていたら、これは私たち世代の責任だと。
飲食店の料理人ではなく料理研究家として活動しているのは、単純にやりたいことが多くて(笑)。
人と共有したり伝えることが元から好きで、それが私の仕事の核でもあるので、厨房にこもっている訳にはいかなかったんです。
Q:クメール料理研究家として、また1人のカンボジア人としてプラホックはどのような存在でしょうか。
食材としてのプラホックは、本当に理にかなった保存食だと思います。
特に農村地では収穫期の栄養源ですし、プラホックを中心に料理のレパートリーが増えていった点ではカンボジア人の創作力の源を感じます。
地域によって味や料理の仕方が違うところにも面白さがありますね。
親戚のおばさんがプノンペンから50キロくらい離れた農村地に住んでいて、私が6~7歳の頃、そこへ泊まりに行きたくて母にものすごくせがんだことがありました。
その当時、おばさんはプノンペンまで自転車で来ていて、私の席はというと、両ハンドルにクロマーをくくりつけて作ったカンガルーのポケットみたいなイスで、そこで揺られていました。
3泊くらいして自宅に戻ってきた時、母に「どうだった?」と聞かれて答えたのは、「プラホックを食べた」だったんですよ。
ほとんど毎食プラホックが使われていたのが衝撃で、田舎に遊びに行くワクワク感と一緒に今でも懐かしく思い出されます。
なので、私にとっては食材でもあり、思い出でもあり…。
今子供を2人育てていますが、食卓にはプラホックを使った料理も並べます。
後々、この子たちが食べる食べないは彼らの選択ですが、カンボジアのルーツを舌で覚えていてほしいと思っています。
私はいろんな国の料理も食べますし、好きな外国料理もたくさんあります。
カンボジア人は新しいものが好きだし、新しいものは楽しいですよね。
でも、やっぱりクメール料理が1番好きで、戻ってきたくなるんです。
知らないうちに舌が覚えた味は消えないですよね。
Q:著書『NHUM』発売から2年経ち、今後はどのような展開を考えているのですか。
2019年に発売が決定した時、世界各国から予約が入りました。今では40カ国以上に発送していて、アメリカ版アマゾンなどでも取り扱われ始めました。
先ほどの話につながりますが、私の活動は「カンボジアの価値」を「食」を通して引き上げ、この国にルーツを持つ人々が誇りを感じ、そして自分たちの可能性を信じられるようにすることです。
その過程では、外からの力も必要だと強く考えていて、外国で取り上げられたり興味や称賛をいただいたりすることは、何より背中を押してくれます。
外国との行き来が難しくなってしまいましたが、できる方法でこの部分は強化していきたいですね。
また、新しい本のアイデアも尽きなくて…。
私の知っている知識を総動員した『NHUM』ですが、一般的に知られていない途切れそうなクメール料理や食材、調理方法を見つけて、調べて、そして教えてもらい、次へつなげることもしたいんです。
2冊目のお知らせをぜひ楽しみに待っていてください!
NHUM -recipes from a Khmer Home Kitchen
全200ページに渡り、約80のレシピとクメール料理にまつわるいろはがまとめられた料理本。クメール語版と英語版が販売中。2月中旬よりニョニュムショップ(本店)でも取り扱い開始。
―Chef Nakサイトでレシピ公開中― Prahok Ktehをおうちで作ろう
豚挽き肉やココナッツミルクなどと炒め煮にした「プラホック・クティ」
プラホック初心者にもオススメの料理。野菜と一緒に、お米と一緒にどうぞ!
<Facebook>
<YouTubeチャンネル>
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします
ベジタリアンフードで健康を大事にする都民とは?
2024.11.08 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
エアロビクスによるグループ活動の文化とは?
2024.11.01 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
身体を鍛えるジムが大人気?
2024.10.25 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
現代プノンペン都民は健康志向?
2024.10.18 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
教師の職について現役の先生が語る
2024.09.13 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
初等・中等学校の教員を教養するプノンペン教員養成大学(PTEC)とは?
2024.09.06 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
親から見た教師のキャリアとは?
2024.08.30 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
教員養成学校の学生、思いを語る
2024.08.23 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
教師になるためにはどうしたらいい?
2024.08.16 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
クメール人が語る「憧れの教師」とは?
2024.08.09 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
プノンペン都民が今求める公共サービスの現状とは?
2024.07.12 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
クメール人の大学生が求めることは?
2024.07.05 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
30-40代が現役しているクメールの社会人の求める幸福感とは?
2024.06.28 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
内戦時代を生き抜いてきた人々が求める幸せとは?
2024.06.21 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
2019年の最新の国勢調査データの紹介
2024.06.14 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
カンボジア生活情報誌「NyoNyum131号」発行のお知らせ!
2024.06.07 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
今年のクメール正月を思う市民の感想
2024.05.17 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
ニョニュムスタッフのクメール正月の過ごし方
2024.05.10 ニョニュムスタッフ現地レポート特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
寺の存在とクメール正月とは?
2024.05.03 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
クメール正月の準備とあれこれ!
2024.04.26 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
伝説とクメール正月
2024.04.19 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物
カンボジア生活情報誌「NyoNyum130号」発行のお知らせ!
2024.04.12 特集記事生活情報誌ニョニュム
クメールの民間治療のあれこれ!
2024.03.22 特集記事生活情報誌ニョニュム
田舎で昔ながらの伝統治療法で住民の病を診ているクル・クメール
2024.03.15 特集記事生活情報誌ニョニュム
クル・クメール協会の会長インタビュー
2024.03.08 特集記事生活情報誌ニョニュム
薬草の商売とは?
2024.03.01 特集記事生活情報誌ニョニュム
クメール薬草採取の仕事とは?
2024.02.23 特集記事生活情報誌ニョニュム
薬草対象のクメール植物って?
2024.02.16 特集記事生活情報誌ニョニュム
カンボジア生活情報誌「NyoNyum129号」発行のお知らせ!
2024.02.09 特集記事生活情報誌ニョニュム
灯篭飾りの意味解説
2024.01.24 特集記事生活情報誌ニョニュム
水祭りのあれこれの写真集
2024.01.15 特集記事生活情報誌ニョニュム
水祭りに集まるクメール庶民の思い
2024.01.08 特集記事生活情報誌ニョニュム
試合に出るカヌー団への支援ってどのようなものある?
2024.01.01 特集記事生活情報誌ニョニュム
レースのあれこれ
2023.12.25 特集記事生活情報誌ニョニュム
水祭りの由来とは?
2023.12.21 特集記事生活情報誌ニョニュム
カンボジア生活情報誌「NyoNyum128号」配信のお知らせ!
2023.12.20 特集記事生活情報誌ニョニュム
NyoNyum127号特集①:ニョニュム発行人・山崎幸恵が語る「ニョニュムの生い立ち」
2023.11.28 NyoNyumフリーペーパー出版特集記事
NyoNyum127号特集②:ニョニュム的カンボジア時事録2003~2023
2023.11.28 フリーペーパー出版特集記事生活情報誌ニョニュム
NyoNyum126号特集⑥:プノンペン周辺地域の魅力を解明!
2023.10.10 不動産不動産(生活)特集記事
NyoNyum126号特集⑤:ボレイの住民に聞く!ボレイの魅力とは?
2023.10.09 不動産不動産(生活)特集記事
NyoNyum126号特集④:プノンペンの各地域で進むボレイ開発
2023.10.08 不動産不動産(生活)特集記事
NyoNyum126号特集③:プノンペンの不動産投資のプロに聞く !~日本人にとっての魅力と不動産価値は~
2023.10.06 不動産不動産(生活)特集記事
NyoNyum126号特集②:ドンペン区の魅力を現地の 不動産専門家に聞く!
2023.10.03 不動産不動産(生活)特集記事
NyoNyum126号特集①:プノンペンの土地価格は?
2023.10.02 不動産不動産(生活)特集記事
NyoNyum127号特集①:ニョニュム発行人・山崎幸恵が語る「ニョニュムの生い立ち」
2023.11.28 NyoNyumフリーペーパー出版特集記事
カンボジアで最もモダンで最大級のマツダ自動車ショールーム 正式オープニングセレモニー開催
2023.11.08 イベントニュースビジネス
アンコール見聞録 #38 遺跡を上から見る
2023.09.12 アンコール見聞録シェムリアップ文化
カンボジア生活情報誌「NyoNyum126号」発行のお知らせ!
2023.08.31 NyoNyum
アンコール見聞録 #37 東南アジア競技大会(Southeast Asian Games=SEA Games)マラソン
2023.07.02 アンコール見聞録シェムリアップ
NyoNyum124号特集⑤:間もなく始まるSEA Games 2023、その認知度は?
2023.04.27 スポーツ特集記事
アンコール見聞録 #34 遺跡写真館
2023.01.12 アンコール見聞録シェムリアップ
カンボジア生活情報誌「NyoNyum121号」発行のお知らせ!
2022.10.14 NyoNyum文化
【 カンボジアでHappy子育て!その13】続・ゲームやYouTubeとの付き合い方
2022.08.24 カンボジアでHappy子育て!
カンボジア生活情報誌「NyoNyum120号」発行のお知らせ!
2022.08.17 NyoNyum
アンコール見聞録 #29 変わるもの、変わらないもの
2022.03.04 アンコール見聞録シェムリアップ
【旅育!!ノマド家族。】⑯プノンペン市内でも旅育!
2022.01.05 【旅育!!ノマド家族】プノンペン
NyoNyum115号特集:①すべての力を出し切り、成長の階段を上る選手たち~水泳編~
2021.11.24 特集記事
NyoNyum114号特集:①はじまりは、お給料 ~行政改革の一環として、公務員の給料を銀行振込へ~
2021.09.29 ショッピング(生活)特集記事
パラスポーツinカンボジア⑬いざ、東京パラリンピックへ!
2021.08.30 パラスポーツパラスポーツ
カンボジア生活情報誌「NyoNyum114号」発行のお知らせ!
2021.08.18 NyoNyum
アンコール見聞録 #25 紙幣の図柄をよく見ると
2021.07.08 アンコール見聞録シェムリアップ
(日本語) 【日本で活躍するカンボジア人によるレポートフロムジャパン】ティム・チーさん
2021.06.21 レポートフロムジャパン
(日本語) NyoNyum112号特集:①はじまりは、「人に寄り添う」小さな援助
2021.06.01 特集記事
(日本語) NyoNyum111号特集:⑤食材以上の価値を秘めたプラホック
2021.03.05 カンボジア料理レシピ(生活)文化特集記事
(日本語) NyoNyum106号特集:①カンボジアの農業が直面する6つの問題
2020.04.22 特集記事農業