NyoNyum Magazine にて連載しているスローライフエッセイ「Moi Moi ライフ」
(「Moi Moi」とは、クメール語で「ひとつひとつ、ゆっくりと」の意味。恵み豊かなカンボジア
でのスローライフをお届けします)
シェムリアップで暮らす小出陽子さん。NGO「アンコール人材養成支援機構:JST」の活動、JSTがサポートしている「バイヨン中学高等学校」の近況、そして普段の暮らしで感じたいろいろなことを綴ります。
今回は、「クメールの発酵食文化を世界に!」です。
クメールの発酵食文化を世界に!
前号では、ベトナムのメコンデルタ地域に住むクメールクロム(クメール民族)が、クメールの伝統・文化を大切に守りながら生活を続けている、という話題を取り上げました。今回はクメールクロムの“食”についてです。
メコンデルタの旅では、 毎回、 タクシードライバーに、地元で人気の食堂を案内してもらっています。今回も行った先々の食堂でお薦め料理を注文したのですが、料理はどれも普段カンボジアの人々が食べている、いわゆる“クメール料理”でした。味付けはプラホック(発酵魚の塩辛)やトゥ ックトゥレイ(魚醤) 、クルーン(ハーブや香辛料をペースト状に調合した調味料)など。なれずしのように発酵させた生魚を調理したマム(ハーブなどと和えていただく)やプォーッ(熱を加えると粕漬けのような深い味わいとなる)料理もありました。
考えてみれば、海と川に囲まれた広大な水田地帯であるメコンデルタは、発酵魚をつくる際に必要なお米と魚と塩がカンボジア本土以上に豊富に得られる地です。クメール民族の最初の王朝“扶南”はメコンデルタにあったことからも、現在、クメール料理と言われている料理、特に魚の発酵食品は、もともとこの地域で生まれたものなのかもしれません。
魚に付く乳酸菌をご飯の糖で発酵させ、旨味成分を増幅させた食品であるマムやプォーッは、美味しいだけでなく、免疫力を高め、疲労回復やスタミナアップにも貢献すると言われています。まさに、クメールの人々が土地の恵から創意工夫で生み出したミラクルフーズなのです。 その発酵技術もさることながら、 ハーブやスパイスなどの食材と合わせる調理法も多種多様で、いにしえの時代からこの地で脈々と食べ継がれてきた人々の息づかいを感じます。いつかクメール料理が「食の無形文化遺産」に登録され、クメール民族の知恵を世界にアピールできたらいいですね。まだ味わったことがない方は、ぜひお試しあれ!
(この記事は2023年8月に発行されたNyoNuym126号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)
1992年早稲田大学大学院卒。一級建築士。2000年、UNESCO/JSA 遺跡修復オフィス建設のため、カンボジアに赴任。2005年~ 2020年、シェムリアップにてレストランCafe Moi Moi を経営。2005年JST(NGO:アンコール人材養成支援機構)を設立し、農村地域の支援活動を始める。2013年“アンコールの都の西北” に公立のバイヨン中学校を創設。2019年には高校も併設され、現在、全校生徒1,000 人の学校運営を行っている。
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41:粋なお福分け
42:魅惑のカンボジア発酵魚料理
43:NyoNyumとカンボジアと私
44:村の中学生たちの日常
45:中学校退学者のその後
46:バイヨン高校がほしい!
47:バイヨン高校、ついに開校!
48:他国事(ひとごと)ながら
49:”パプリカ“歌って英語授業!
50:”サイクリングブーム
51:将来の夢はYouTuber!
52:ナーガ・シンハ彫像修復プロジ ェクト終了!
53:Cafe Moi Moi コロナ禍で一時休業へ
54:バイヨン中高校先生方のコロナ禍副業
55:話し出したら止まらない“将来の夢!”
56:Moi Moi Farmでマンゴー狩り!
57:"一家に一農園"ブーム到来?
58:『インドラネット』
59:日本にもクメール寺院が!
60:コロナ禍乗り越え、 自立したスタッフたち
61:公立学校の教師不足、次なる一手へ
62:教師の頑張りに感謝!
63:政治はまつりごと、選挙は祭りなり
64:学校閉鎖中の生徒たちの学習はいかに?
65:“これまで” と“これから”
66:カンボジア国王がいらっしゃる!?
67:バイヨン高校初の卒業生の快挙!
68:ベトナムのクメールクロムを訪ねて
69:クメールの発酵食文化を世界に!
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