アンコール見聞録 #29 変わるもの、変わらないもの
アンコール見聞録 #29 変わるもの、変わらないもの
2022.03.04

NyoNyum Magazine にて連載しているコラム「アンコール見聞録」

上智大学アジア人材養成研究センター現地責任者として、シェムリアップでアンコール建築に関する研究を行っている三輪悟さんが、アンコール建築の歴史や、遺跡の周りで営まれる生活、カンボジアにまつわるあれこれを綴ります。

 

変わるもの、変わらないもの

新型コロナ禍のアンコール観光2021

アンコール遺跡チケットの年毎の販売数を見ると、259万枚(2018)、221 万枚(2019)、40 万枚(2020)、1.3 万枚(2021)と推移している。2020 年が想外に多い理由は1~3 月までに売った枚数を反映しているからである。

新型コロナの影響で底をついた2020 年4 月以降の月ごとの統計を見ると、遺跡入場に際してチケット購入が必須となる外国人観光客の様子を窺い知ることができる。

さらに一日ごとの枚数を見ると、2021 年12 月17 日にシェムリアップ空港が再開しシンガポール航空が運航を始めてからの微増変化が明らかに見て取れる。

 

遺跡保護の主役たち

アンコールワット西参道(2021年12月24日)

既刊のコラムにおいて遺跡保護活動は二年が経過するコロナ禍にも関わらず原則として継続したことを紹介した。

この間、各遺跡では相応に工事が進行した。現場管理者らは作業員のモチベーション向上を意図して、慰労食事会をコロナ禍の合間を縫って催してきた。

カンボジア人の専門家たちは、作業員の重要性をよく理解しており、作業員らを主人公にすべく、感謝の気持ちを忘れることなくよく頑張っている。

アンコールトム城壁(2022年1月5日)
アンコールワット護岸(2022年1月19日)

 

市内38本の道路工事

昨年末のシボタ通りは混とんとしていた(2021年11月25日)

2020年9月に突然発表されたシェムリアップ市内38本の道路再建工事は、2022年1月までに下水管の埋設を含む主要な工事をほぼ計画通りに終えた(当局発表による)。

車道の幅員はほぼ同じであったものの、信号機の増設、歩道の石張り整備、監視カメラの設置、駐車スペースの設定、など市内の道路事情は驚くほど大きな変化を遂げた。

今後大型バスが運行を再開する暁には、市内は想像を絶する大渋滞が起きるであろうことは、おそらく多くの市民が薄々感じている。実践経験から確実に学んでいくことを期待したい。

 

ISS と満天の星空

前澤さんが搭乗するISS をシェムリアップにおいて肉眼で観察することができた( 2021年12月9日午後6時50分頃)

昨年12 月前澤友作さんがロシアのソユーズに搭乗し、地球上空400km を周回する国際宇宙ステーション(ISS)を訪れ滞在した。

シェムリアップにおいてカンボジア人の大勢の若者らと共に肉眼で観察する機会を得た。日本人の一市民が宇宙に滞在できる時代がやってきたことを目の当たりにして時代の大きな変化を感じた。

一方で、カンボジアの夜空を飾る満天の星たちは、アンコール時代よりほぼ同じ姿を見せている。

コンポンチャム州郊外で見る満天の星空(2022年1月1日)

 

(この記事は2022年2月に発行されたNyoNuym117号に掲載されたものを再掲しています。文中の情報は当時の情報です。)

 

コラムニスト: 三輪 悟(みわ・さとる)

上智大学アジア人材養成研究センター(シェムリアップ本部)助教
1997年10月よりシェムリアップ在住。専門はアンコール建築学。NyoNyum89号(2017年6月号発行)より遺跡やカンボジア生活にまつわる本コラム『アンコール見聞録』を連載。

 

 

前の記事:

 

過去の記事

7:死んだカエルと干しガエル
8:アンコールワットの矢ワニ
9:西参道正面北側のナーガ
10:石の穴 あいたり、消えたり
11:遺跡内は犬禁止
12:米価が3倍になる継続性
13:外国人の遺跡入場者数
14:仏人がジャワに学んだ修復手法
15:アンコールワットの睡蓮
16:大阪万博 旧カンボジア館
17:アプサラ機構創設25周年
18:プノンペンオリンピックスタジアム
19:新型コロナとアンコール観光
20:聖山クーレンでのキャンプ体験に想う
21:聖山クーレンでのキャンプ体験に想う(続編)
22:統計に見るウイズ・コロナのアンコール観光
23:スラスラン中央寺院(仮称)の復元・再構築
24:新型コロナ一年
25:紙幣の図柄をよく見ると
26:遺跡修復新時代
27:レッドゾーン指定でついに修復作業がストップ
28:観光の再開
29:変わるもの、変わらないもの

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