(日本語) 従兄弟6人で起業。カンボジア発コーヒーチェーン『BROWN』【CEO・チャン・ブンレアン氏インタビュー】
(日本語) 従兄弟6人で起業。カンボジア発コーヒーチェーン『BROWN』【CEO・チャン・ブンレアン氏インタビュー】
2018.08.26

日本人以外のビジネスパーソンも取り上げたいということで、前号からリニューアルした『Business Talk』のコーナー。

8月10日発行『ニョニュム』96号では、特集「味わうカフェ空間」の中で、カンボジアを代表するコーヒーチェーンとして紹介した『BROWN COFFEE AND BAKERY(以下、ブラウン)』のCEO・Chang Bunleang(チャン・ブンレアン)さんをインタビューしました。

ブラウンは現在プノンペンに17店舗、シェムリアップに2店舗を構え、カンボジアを代表する巨大コーヒーチェーン。カンボジア人の学生や在住外国人など、幅広い客層から支持されています。

カフェ業界を率い、カンボジアの未来を創る起業家のストーリーです。

 

従兄弟6人で会社を興す。仕事を探す中で起業を決意

——まずはカフェを開いたきっかけ、そして誰とどのように始めたか教えてください。

海外生活の経験がきっかけです。「BROWN COFFEE AND BAKERY」は2009年、私が23歳のときに従兄弟5人とともに創業したのですが、私たちはその前にオーストラリア、アメリカ、タイなど別々の国へ留学していました。

そして卒業後に帰国し、自分に合う仕事を探しているうち「探すのではなく、自分たちで職を創り出してしまえばよいのでは?」という考えに至りました。そこで、海外各国で自分たちが体験した現代的なライフスタイルをヒントに、「新しいコーヒー文化をカンボジアに紹介しよう」とカフェを開くことに決めたのです。

創業メンバーそれぞれが異なるスキルを持ち寄り、その実現に向けて動き出しました。私は経営のために多くの時間を割き、1人はパンやお菓子作りに集中、その間にほかの者が店舗の設計や建設を進めるといった具合に、お互いの足りない部分を補い合いながら懸命に動き、これが後に実を結びました。

初号店オープン当初3カ月は厳しい経営状況でしたが、それでも信念を持ち続け、お客様の意見に耳を傾けながら商品やサービスの改善に努めました。それが、今日のブラウンにつながっています。

(パンや焼き菓子などが並ぶショーケース。)

——もともと多店舗展開を考えていたのでしょうか?

 はじめは最初に開いた店をよりスムーズかつ健全に運営することに集中していたのですが、そのなかで、カフェが人々の生活の中で果たす役目とそのポテンシャルの大きさに改めて気づかされました。そこで、「もっとたくさんの人たちにブラウンを体験し満足してもらいたい」という思いから、別の場所にも店を出すことを決めました。以降、「より多くの人の身近な場所に」と各地に店舗を増やしています。

 

「最高のコーヒー体験」を生む空間を創りたい

——ブラウンのコンセプトやモットーを教えてください。

創業以来、ドリンクや食べ物、空間を含め「最高のコーヒー体験を提供する」というコアバリューに基づいて経営しています。単なる「店」を超えた「空間」を創りたいんです。自家製のコーヒー、作りたてのパンやケーキと料理でお客様に喜んでもらいたい。そしてその空間は、みんながくつろいだり、勉強や仕事をして過ごせ、人と人がつながれる、そんな暖かく心地よい場所でありたいと考えています。

さらに、カンボジアの若者に対する機会の創出にも重きを置いています。私たちにとって、スタッフは家族同然。彼らが成長し人生で成功するのを見たい。この思いから、スタッフが大学に通い続けるための奨学金制度を設けました

会社としては、いつか我が社がカンボジア人1万人の雇用を生むことが夢です。また私個人としては、カンボジアで生まれたローカルブランドを、国内だけでなく海外でも認められるものにしたいと思っています。

Brown coffee and bakery

——店舗は、誰がどんなコンセプトで設計しているのですか?

店舗設計においては、創業者のうち4人が建築、エンジニア、内装といったスキルを持っていることは我々の有利な点です。一方で、多様かつ独創的な空間を創り出すため、いろいろな建築家と組むようにしています。それぞれの建築家が持つ想像力と独自性のもと、店舗ごとにコンセプトが異なります。

「これまでにないブラウンをデザインしてください」。この1点だけをお願いし、あとは建築家たちに自由に新しいことに挑戦してもらっています。このやり方で出来上がるものに驚かされることを、私たち自身も毎回楽しんでいます。

——ほかにも、ブラウンの強みを挙げるとすると?

ブラウンのビジネス上の強みは、10年近くにわたって多くのお客様と関わり、その声を聞いてきたことだと私は考えています。常にお客様との会話を心がけ、そこから彼らの好み、どんなドリンクや食べ物が求められるかを知りえてきました。

またこれに加えて「新鮮さ」もあります。自社で焙煎を行っているので、品質を管理できるのです。ブラウンでは、焙煎後12時間から14日までの間の豆だけを使用しています。

品質の安定、そしてお客様に「最高のコーヒー文化」を体験してもらうため、私たちは最善を尽くし続けています。

 

——最後に、起業したいと考えているカンボジアの若者に、何かアドバイスやメッセージを。

起業家になりたいという情熱が本当にあるなら、しっかり計画を立て懸命に取り組み、思い切って始めるべきです。恐れず、待たず、文句を言わず、前向きに動き出しましょう。つまずいたり失敗することもあるでしょうが、その度に立ち上がって、迅速に動き、懸命に働き、賢くなればいい。

またどんなビジネスにおいても、「コミュニティをよりよい場所にする」ことがコアバリューのひとつ、つまり核となる価値観のひとつであるべきだと私は思います。

Chang Bunleang

(2018年8月10日発行『NyoNyum』96号/9月10日発行『NyoNyum Khmer』29号より)

にほんブログ村 海外生活ブログ カンボジア情報へ
にほんブログ村 旅行ブログ カンボジア旅行へ

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

関連記事

ベジタリアンフードで健康を大事にする都民とは?

2024.11.08 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

エアロビクスによるグループ活動の文化とは?

2024.11.01 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

身体を鍛えるジムが大人気?

2024.10.25 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

現代プノンペン都民は健康志向?

2024.10.18 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

教師の職について現役の先生が語る

2024.09.13 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

親から見た教師のキャリアとは?

2024.08.30 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

教員養成学校の学生、思いを語る

2024.08.23 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

教師になるためにはどうしたらいい?

2024.08.16 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

クメール人が語る「憧れの教師」とは?

2024.08.09 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

プノンペン都民が今求める公共サービスの現状とは?

2024.07.12 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

クメール人の大学生が求めることは?

2024.07.05 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

30-40代が現役しているクメールの社会人の求める幸福感とは?

2024.06.28 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

内戦時代を生き抜いてきた人々が求める幸せとは?

2024.06.21 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

2019年の最新の国勢調査データの紹介

2024.06.14 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

カンボジア生活情報誌「NyoNyum131号」発行のお知らせ!

2024.06.07 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

今年のクメール正月を思う市民の感想

2024.05.17 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

ニョニュムスタッフのクメール正月の過ごし方

2024.05.10 ニョニュムスタッフ現地レポート特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

寺の存在とクメール正月とは?

2024.05.03 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

クメール正月の準備とあれこれ!

2024.04.26 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

伝説とクメール正月

2024.04.19 特集記事生活情報誌ニョニュム読み物

カンボジア生活情報誌「NyoNyum130号」発行のお知らせ!

2024.04.12 特集記事生活情報誌ニョニュム

クメールの民間治療のあれこれ!

2024.03.22 特集記事生活情報誌ニョニュム

クル・クメール協会の会長インタビュー

2024.03.08 特集記事生活情報誌ニョニュム

薬草の商売とは?

2024.03.01 特集記事生活情報誌ニョニュム

クメール薬草採取の仕事とは?

2024.02.23 特集記事生活情報誌ニョニュム

薬草対象のクメール植物って?

2024.02.16 特集記事生活情報誌ニョニュム

カンボジア生活情報誌「NyoNyum129号」発行のお知らせ!

2024.02.09 特集記事生活情報誌ニョニュム

灯篭飾りの意味解説

2024.01.24 特集記事生活情報誌ニョニュム

水祭りのあれこれの写真集

2024.01.15 特集記事生活情報誌ニョニュム

水祭りに集まるクメール庶民の思い

2024.01.08 特集記事生活情報誌ニョニュム

試合に出るカヌー団への支援ってどのようなものある?

2024.01.01 特集記事生活情報誌ニョニュム

レースのあれこれ

2023.12.25 特集記事生活情報誌ニョニュム

水祭りの由来とは?

2023.12.21 特集記事生活情報誌ニョニュム

カンボジア生活情報誌「NyoNyum128号」配信のお知らせ!

2023.12.20 特集記事生活情報誌ニョニュム

NyoNyum127号特集②:ニョニュム的カンボジア時事録2003~2023

2023.11.28 フリーペーパー出版特集記事生活情報誌ニョニュム

NyoNyum126号特集⑥:プノンペン周辺地域の魅力を解明!

2023.10.10 不動産不動産(生活)特集記事

NyoNyum126号特集④:プノンペンの各地域で進むボレイ開発

2023.10.08 不動産不動産(生活)特集記事

NyoNyum126号特集①:プノンペンの土地価格は?

2023.10.02 不動産不動産(生活)特集記事

NyoNyum124号特集①:カンボジアSEA Games2023のあれこれ!

2023.04.20 カンポットケップシアヌークビルシェムリアップスポーツプノンペン特集記事

NyoNyum120号特集:⑥コロナ禍で頑張る現地企業

2022.10.06 シェムリアップ特集記事

おすすめ記事

アンコール見聞録 #38 遺跡を上から見る

2023.09.12 アンコール見聞録シェムリアップ文化

アンコール見聞録 #34 遺跡写真館

2023.01.12 アンコール見聞録シェムリアップ

アンコール見聞録 #29 変わるもの、変わらないもの

2022.03.04 アンコール見聞録シェムリアップ

【旅育!!ノマド家族。】⑯プノンペン市内でも旅育!

2022.01.05 【旅育!!ノマド家族】プノンペン

アンコール見聞録 #25 紙幣の図柄をよく見ると

2021.07.08 アンコール見聞録シェムリアップ

(日本語) NyoNyum111号特集:⑤食材以上の価値を秘めたプラホック

2021.03.05 カンボジア料理レシピ(生活)文化特集記事