NyoNyum121号特集④:カンボジア人が思うヴィパッサナー(瞑想)のメリットとその現状とは?
NyoNyum121号特集④:カンボジア人が思うヴィパッサナー(瞑想)のメリットとその現状とは?
2022.11.26

現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum121号の特集のWeb版です。

「クメール人の拠り所ー仏教の僧侶と寺の存在感とはー

「国家・宗教・国王」という国の標語に掲げられている通り、カンボジア人の90%が信仰する仏教(小乗仏教)は、君主や政府と並んで国家の最高機関の1つとされています。国王を含むカンボジア国民は、お坊さんを“サンマー・サンポット(仏陀)” の使徒であると信じており、古代から現在に至るまで僧侶は高い人格と深い知識を持ち、人々に仏教の教えを示す高貴な存在として敬っています。

カンボジア全土に多くの寺院が存在することも、仏教に対する強い信仰心を示しています。カンボジア
の人々がお坊さんを崇拝し、仏教を強く信じる理由に迫ります。

カンボジア人が思うヴィパッサナー(瞑想)のメリットとその現状とは?

カンダール州のヴィパッサナー・ドゥラック仏教センターで瞑想している僧侶と尼僧の様子

経済発展とともにストレスが溜まる社会になりつつある今のカンボジア。日常生活や家族や職場での人間関係により生じる問題がさまざまある中、それを解決するための方法を考えたことがあるでしょうか。仏教の教えの中には「生まれた人間には苦悩があるものだ」という言葉があります。人間が心を鎮めずいろいろ考え込んだり、怒ったり、恨みを持ったりすると、精神的に停滞し幸せな生活を送ることができません。そんな悩みから解放する手段として、瞑想があります。そして多くのカンボジア人は、瞑想は悩みや精神的な問題を解決すると信じています。

 

エム・ブンヴェーン僧侶

エム・ブンヴェーン僧侶(62)はカンダール州にあるウドン山近くのヴィパッサナー・ドゥラック仏教センターに在籍している。僧侶はカンボジア初の瞑想センターの設立について次のように説明してくれた。「ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センターは1999年にソム・ブントォーン住職によって建設され、23周年を迎えました。カンボジア最大の瞑想センターであり、全国各地に支部を持っています」

このヴィパッサナー・ドゥラック仏教センターには3年間の初等教育と4年間の中等教育、5年間の高等教育という制度がある。それぞれの教育課程では卒業試験が行われ、合格した学生が進級できるという。

また、瞑想クラスをとる人は電話の使用や私語を厳しく禁止されている。「ヴィパッサナー(瞑想)」をするには、呼吸に集中して心を落ち着かせることが必要だという。

ブンヴェーン僧侶はヴィパッサナーのメリットについて「ヴィパッサナーは我々の心を鎮めて、悩みから解放させる唯一の作法で、瞑想をすることにより人は夜にきちんと眠り、健康的な生活が送れるようになります」と説明してくれた。

ヘム・ブントォーン住職がヴィパッサナーの生徒たちに仏典教育をしている様子

ヴィパッサナーに加えて、毎週月曜日と金曜日にヘム・ブントォーン住職により、すべてのヴィパッサナーの生徒たちへの仏典教育、解釈の指導、瞑想に関する解釈の講義がある。

「ヴィパッサナーの後は僧侶が講師となって、瞑想に関する質問に解答します。また、瞑想の学習者は図書館で瞑想に関する自己研究をすることが可能です」

ブンヴェーン僧侶によると、この数年間でヴィパッサナーに関心を持つ30代後半の人が増えているという。50代後半以上の定年退職を経た世代は昔から変わらず利用者が多いそうだ。

カンボジアのヴィパッサナー・ドゥラック仏教センターには2万7,000人以上のフォロワーを持つ公式のFacebookページがあり、SNSユーザーから多くの支持を受けている。さらには午前7時から夜9時まで放送する独自のラジオ局もあり、英語による瞑想トレーニングコースも行われている。

個人的な悩み、家族の問題、職場のプレッシャーなど日常生活に問題があるときに、心の頼りにヴィパッサナー・ドゥラック仏教センターで瞑想コースを受けるために足を運ぶ人が多いそうだ。センターではヴィパッサナー中の宿泊と食事を無料で負担している。

入門者向けに一週間の短期瞑想コースを受ける人の宿泊施設
瞑想修行者用の新しい宿泊施設が並んでいる
尼僧の宿泊施設の様子

 

ヴィパッサナーに来ている人のコメント

セーン・ソピアップさん

このセンターで7年間、瞑想のために滞在しているセーン・ソピアップさん(73)。「このセンターでのヴィパッサナーにより、私の心は落ち着き、欲望を減らすことができ、健康に暮らすことができています。宿泊施設と食事に関しては無償で提供してくれるのでとても安心です。生活環境もとても良く、僧侶と尼僧は別々に生活しています」

 

ホル・ネアンラットさん

ホル・ネアンラットさん(75)によると、「私は元々医療スタッフとして働いていたため、その経験を活かしてこの瞑想センターの治療施設に通っている人の看護を手伝っています。ここで生活しているほとんどの人は高齢者なので、めまいや熱中症、高血圧などの病気になりやすいんです」という。ネアンラットさんの話では、コロナが発生していたこの約2年間に、ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センターに足を運んで瞑想する若者の姿が増えたという。一方、中高年はコロナにかかわらず常に増え続けているという。

 

ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センターの支部は次のような州にもある

カンダール州のヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター敷地内の奥にある大仏前で瞑想式典を行ったときの様子(2022年5月)

クラチェ州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(1999年1月26日建設)

タケオ州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(1999年2月10日建設)

ケップ州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(1999年2月18日建設)

シェムリァップ州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(1999年7月23日建設)

ポーサット州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2000年5月20日建設)

プレイベン州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2000年6月24日建設)

コンポントム州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2000年8月31日建設)

プレアシアヌーク州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2000年9月9日建設)

プノンペン都ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2000年10月22日建設)

コンポンチュナン州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2000年11月2日建設)

スヴァリエン州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2001年11月28日建設)

カンポット州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2002年3月30日建設)

モンドルキリ州ヴィパッサナー・ドゥラック仏教センター(2002年12月15日建設)

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