NyoNyum120号特集:④コロナ禍で誕生したサービス業あれこれ
NyoNyum120号特集:④コロナ禍で誕生したサービス業あれこれ
2022.10.05

現在、カンボジア国内で配布中のカンボジア生活情報誌NyoNyum120号の特集のWeb版です。

「より住みやすい街を目指してーシェムリアップの今を歩こう!ー

シェムリアップ州は世界遺産アンコールワットを有し、カンボジアで最も観光が盛んな地域。しかしこの2年来、新型コロナの影響で観光業が大打撃を受け、まるでゴーストタウンのようになってしまった市内の様子が、日々SNS等で伝えられていました。

そんなシェムリアップは、コロナ前の2018年にプノンペン、バッタンバンとともに、日本政府が支援するASEANスマートシティ・ネットワークのパイロット都市として採択されました。また、シェムリァップ州政府は2020年11月30日より市内38本の道路整備事業を開始し、コロナ禍で町全体が静まり返っている中での工事に人々は驚きを見せましたが、13カ月ですべての工事が終了し、街は美しく生まれ変わりました。

そして今、コロナ禍を抜け出しニューノーマルの生活を目指すカンボジアには、少しずつ観光客やビジネス客が戻り始めています。待ち望んでいた観光産業の再稼働に期待が膨らむシェムリアップも、この38本の道路整備を皮切りに信号設備、街灯、歩道等の整備が進み、スマート化に向けて大きく踏み出そうとしているように思われます。

シェムリアップが目指すスマートシティとはどういう姿なのでしょうか。そして現地の人や事業者たちは、この新たな発展への取り組みをどのように感じ、何をしようとしているのでしょう?

 

コロナ禍で誕生したサービス業あれこれ

コロナで大きな打撃を受けた観光業。シェムリァップの街はその危機に直面し、実際に多くのビジネスが休業、廃業に追い込まれました。一体この先どうなってしまうのでしょう。不安が広がる中、それでも知恵を振り絞って新しいビジネスを始め、新たな需要を生み出している人たちがいます。

 

牛タン屋 Re:与作

店長とカンボジア人スタッフ ソペアさん

2020年12月にオープンした「牛タン屋与作」。一時閉店となったがその後継として「牛タン屋Re: 与作」が2022年6月に再オープンした。店長の河地一樹さん(24)によると、お客様は在住日本人が中心だそう。今後はカンボジア国産の牛タンをもっといろんな人に味わってみてもらいたいそうだ。河地さんは3年ほど前に現地プロサッカーチーム「アンコールタイガーFC」のフロント・現場スタッフのインターンとしてシェムリァップに8カ月滞在し、一度帰国。半年ほど前から今度は「Kumae Banana Paper Products」という会社のスタッフとしてシェムリァップに戻ってきたそうだ。

炭火で焼く極上タン

カンボジア国産の牛タンを使用し、味にも定評のある与作。「日本人や世界各国の人たちにカンボジアならではの体験をしてもらうために、国産の牛タンにこだわっています」と河地さん。コロナが落ち着きつつある中、新たな戦略としてインターネットを通じて店と国産牛タンをPRしていきたいと語る河地さんは、「この街に足を運んでくれた人にシェムリァップの心地良さやあたたかさを感じてもらいながら、また来たいと思ってもらえるような店づくりをしていきたい。カンボジアの方にも美味しいと思っていただけるよう、牛タンブームをアンコールワットの街で起こしていきたいですね」と語る。

当店おすすめのネギ塩タン

州政府が計画しているスマートシティをどう思うか、という問いに河地さんは、「のどかな雰囲気と自然豊かなシェムリァップが好きで、都市化がどんどん進んでしまうのは環境問題の面からもどうなのかなと思う半面、やはり便利になることで経済が回りやすくなり、住民の健康、幸福度が増すと思います。今のカンボジアにはIT分野の既得権益や法規制が少ないので、日本でスマート化を進めるより浸透が早いのかもしれません」と語る。

38本の道路整備を目の当たりにして「明らかに道路事情が悪い場所の工事は必要ですが、すべての道路がコンクリートになる必要はないと思う」という河地さん。地元の人々の生活環境を激変させるような開発ではなく、生活するうえで便利になったと実感しながら人とインフラが一緒に成長していくべきだと考える。そのうえで治安面や福祉制度の向上に期待したいという。

新メニューのネギ塩たっぷりタン縛り
店長の河地一樹さん

牛タン屋 Re:与作
住所:Group 2, Steung Tmey, Svay Dangkum, Siem Reap
電話:087-428-965
営業時間:18:00-23:00( Wed closed)

 

Japanese Izakaya DAI

シェムリァップで旅行会社「ハッピースマイルツアー」を経営している伊東邦将さん(46)。コロナで観光産業の先行きが見えない中、どうにかして約20人のスタッフに仕事をあげ続けられないかと考えていた。シェムリァップには日本風の居酒屋がなかったため、コロナ禍の2021年2月にこの「Izakaya DAI」をオープンすることにしたそうだ。だがオープンして2 カ月後に市内がロックダウンとなり、経営には本当に苦労したという。苦しい状況の中、ポイペトやバッタンバン、プノンペンから日本人客が来てくれ、どうにか店は持ちこたえた。そして外出制限の緩和、感染者数の低減に伴い、地元のカンボジア人にも認知され、少しずつ店の経営が回復しつつあるという。

店主の伊東さん

これからの経営戦略について伊東さんは、「日本人にもカンボジア人にも楽しんでいただける店にしたいと思っています。たとえば、店は日本人会の法人会員でもあるので、日本人会の会員証を見せたらドリンク1杯サービスという企画も考えています。また、シェムリァップにはソルティーロアンコールFC、アンコールタイガーFC という日系のプロサッカーチームが2つありサッカー関係者の会も開かれるのですが、それに絡めたサービスも考えています。実はこの店には本田圭佑選手が訪れており、その際にシェムリァップのサッカーを一緒に盛り上げていこうと言っていただけたんです。これらのチームのサポーターに、試合後に観戦チケットの提示で1週間生ビール1杯サービス、なんてことも考えています。こんな風に、地元の人たちが楽しめるように地元に根付いた店づくりをしていきたいと思います」と語った。

来店してくれた本田選手とにっこり笑顔で写真撮影するスタッフ
壁には本田選手直筆のサインが

シェムリァップのスマートシティ計画についても、だいぶ前から聞いていたという伊東さん。「ここはアンコールワットがあり世界的にも有名な観光地です。道路整備をはじめとする街の開発でインフラはきれいに整い始めていますが、住んでいる地元の方々自身が良い生活環境に対する意識を高めていくことが必要だと思います。たとえば、道路はきれいになったのに、よく見るとごみが散らかっているということではいけないと思います。それは人々の意識が変わらないと解決できないと思うんです。私も観光業に携わる者として、観光客を誘致する立場にあります。スマートシティの開発をきっかけに、シェムリァップ市民が身の回りの環境のについて考え直し、いい街づくりに参加するようになっていけばいいなと思います」

チャーシュー麺
とんかつ
えびまよ
紅生姜天ぷら

Japanese Izakaya DAI
住所:#106 Steung Thmey, Svay Dangkum, Siem Reap
電話:092-137-074
営業時間:Lunch 11:30-14:00, Dinner 17:30-22:00 (Sunday closed)

 

POPLE STATION Café&Tour

2022年5月にオープンした自転車や電動バイクのレンタルを営むおしゃれなカフェ「POPLE STATION Café & Tour」。環境に対する高い意識を持ち、店で提供するカフェのコップやストローは米などの自然資源を原材料としている。また店の電力はすべて太陽光発電と徹底している。自転車や電動バイクのレンタルももちろん自然環境への影響を考えてのものだ。将来は地図アプリを開発して、土地勘のない観光客でも簡単に遺跡や市内観光を楽しめるようにしていきたいと構想している。

レンタル条件
カンボジア人:身分証明書と100ドルのデポジット
外国人:パスポートと100ドルのデポジット
レンタル料:半日10ドル、1日15ドル、3日30ドルなど

POPLE STATION Café&Tour
住所:#214, St. Charles De Gaulle, Phum Mundul3, Sangkat Slorkram, Siem Reap
電話:010-709-111
営業時間:7:00-19:00 (everyday)

 

The Funky Village

コロナ前の2019年に開業した、イギリス人経営のセンスが光る内装のホステル。ドア、壁、ロゴなどのデコレーションは色彩豊かで目を引く。毎週金曜日にはゲーム大会、土曜日にはプールパーティー、バーベキューを開催し、お客様を飽きさせない工夫をしている。ゲーム大会の参加費は1 人1ドルで、このお金は沿革地域の貧困家庭の子供の支援に充てている。数日の滞在、1カ月の滞在など、お客様のニーズに合わせて部屋を貸しているほか、要望が多かったドミトリータイプの部屋の増設や屋上にクラブを開く計画もあるという。人が集まり和気あいあいと楽しい時間を過ごしてもらえるように。それがコンセプトだ。

The Funky Village
住所:#319 Funky Lane, Steung Thmei, Svay Dangkum, Siem Reap
電話:069-239-721

 

Bayon Modern Residence

カンボジア人のルーン・クムリァンさん(41)が経営するブティックホテル。コロナ禍の2020年1月にオープンして一時休業を余儀なくされたが、感染者数が少なくなり市内の道路整備が落ち着いたのを見計らって、今年4月に再開した。最近では連休や週末になるとプノンペンなどからの国内旅行者が増え始めているそう。「コロナ禍の2年間、お客様はまったくいませんでした。宿泊客が見込めなくなり、ホテルでの結婚式や誕生会などのイベント予約に切り替えたり、プールを開放して地元の人たちに楽しんでもらうなど工夫を凝らしてきました。その間に市内の道路が整備され、正月などの連休や週末に国内旅行者が増えてきたおかげで、従業員の給料も補償することができるようになりました。今後観光客が増えることを見越して、ホテルの全面改装や市場調査、マネジメント、サービスの見直し、イベントの企画をスタッフと共に行っているところです」

Bayon Modern Residence
住所:#38 Vihear Chin, Svay Dang Kom, Siem Reap
電話:063-900-198, 089-997-299

 

 

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